孟母三遷とは

孟母三遷(もうぼさんせん)は、中国の古典です。

後に聖人となった孟子の母は、息子のためにより良い環境を求め、引越を3回しました。

教育学の視点から、家庭と子どもの情報環境について、述べた古典と考えられています。

目次

現代語訳文

幼い孟子の家は、お墓のそばだった。孟子は、楽しそうに、葬儀のまねをしていた。孟子の母は言った。「ここはうちの子を住まわせる場所ではない」

(孟子の家庭は)市場のそばに引越をした。孟子は、楽しそうに、商売のまねをしていた。孟子の母は言った。「ここはうちの子を住まわせる場所ではない」

(孟子の家庭は)さらに、学校のそばに引越をした。孟子は、楽しそうに、(大人の)礼儀のまねをしていた。孟子の母は言った。「ここはうちの子にふさわしい」。ついに、定住することになった。

孟子は周りの人間の真似をした

孟母三遷の古典が伝えるのは、まず、幼い孟子が、周りの人間の真似をした点です。すぐに真似する子どもの性質は、古典でも現代でも、同じようです。

真似する能力(専門用語では「模倣」ともいいます)は、生物学においても、ミラーニューロンの存在によって、基礎づけられています。

言語学において、「学び」という言葉の語源は、「まねび」という言葉だと言われています。学ぶことと真似ることは、もともとは同じ行動だったのかもしれません。

孟子の母はよく子どもを見ていた

孟子の母は、よく子どもを見ています。おそらく、孟子が何気なく遊んでいる姿から、周囲の影響を感じ取ったのではないでしょうか。大きな事件、わかりやすいテストの成績で、判断しているわけではなく、目の前の子どもの行動を、よく見てよく考えています。

孟子の母は環境を与えた

孟母三遷では、孟子の母は、直接に孟子を教えていません。彼女がしたのは、あくまで子どもが「誰の」真似をするのか、その「誰か」を選ぶことでした。

子どもが何を見て、何を聞き、何を吸収するのか。現代風に言えば、孟子の母は、子どもの情報環境を整えました。

情報環境の整備が教育

学校・教材・勉強だけが、子どもに影響するのではなく、より広く、周囲の人間を含めた生活空間全体が、子どもに影響を与える。このような視点を、情報環境と呼んでいます。

孟子の時代には、テレビ・ゲーム・携帯電話・インターネット、などの人工的なメディアがなかったので、孟子が真似すべき人間は、周囲の人間に限定されていたはずです。孟子の情報環境を変えるためには、引越さえすればよかった。

しかし、現代では、情報環境の範囲は広がっています。人工的なメディアが、子どもの情報環境に加わっています。テレビの視聴時間やインターネットの利用方法などは、子どもの学力と関係があるとわかっています。現代社会では、情報環境を変えるために、引越だけではなく、メディアの選別も、必要になってくるでしょう。

参考  講義 孟母三遷

鄒孟軻母、其舍近墓。

孟子少嬉遊、爲墓閒之事。

孟母曰、此非吾所以居處子也。

乃去、舍市傍。

其嬉戲乃賈人衒賣之事。

又曰、此非吾所以居處子也。

復徙 舍學官之旁。

其嬉戲乃設爼豆、揖讓進退。

孟母曰、眞可以居吾子矣。

遂居。